長距離配送を終えたドライバーが自社営業所に帰着し、車両を所定の場所に停車させました。
その後、終業点呼を受けるために事務所へ向かう途中、荷さばき場の段差で足を踏み外し転倒、右足首を骨折しました。
この事故は「点呼前」の出来事ですが、労災として認められるのでしょうか。
原則として労災に当たる
結論から申し上げますと、帰庫後から点呼を受けるまでの間に発生した事故は、原則として労災と認定される可能性が高いです。
労災認定の判断基準には「業務遂行性(会社の支配下にある状態)」という概念があります。
ドライバーが車両を停止させた後の日報作成、荷台の清掃、あるいは点呼場所への移動といった行為は、すべて業務に付随する不可欠な行動とみなされます。
したがって、これら一連の流れの中で発生した負傷は、会社の管理下にある「業務上の災害」と判断されます。
業務遂行性が否定される例外ケース
一方で、帰庫後であっても以下のようなケースでは、業務との因果関係が遮断され、労災として認められない可能性があります。
私的行為への逸脱
帰庫直後、点呼を受けずに自家用車の整備や私的な趣味の活動を開始し、その最中に負傷した場合。
不合理な行動
業務とは無関係な同僚との遊戯、あるいは事務所への移動経路を著しく逸脱した場所での行動中に発生した事故。
個人的な怨恨
業務に起因しない個人的な理由による同僚との闘争(喧嘩)など。
管理者が講ずべき実務上の対策
運行管理者および経営者の皆様は、以下の事項を徹底し、リスクマネジメントを強化する必要があります。
施設内の安全確保
駐車場から事務所に至る動線の照明確保や障害物の除去など、施設管理責任を果たすこと。
速やかな点呼の実施
帰庫から点呼までの待機時間を最小限に留めるよう指導し、業務と私生活の境界を明確にすること。
報告体制の構築
軽微な負傷であっても、敷地内で発生した事象は直ちに報告を義務付ける体制を維持すること。
結論
労働基準法および労働安全衛生法の観点からも、終業点呼を完了し、労働から完全に解放されるまでは労働時間に含まれると解釈するのが実務上の定説です。
「エンジンを切れば業務終了」という誤解を排し、点呼を終えるまでが職務であるという規律を改めて周知するようにしましょう。
